松浦 寿輝 「もののたはむれ」          文春文庫

夢か幻か現実か不可思議な場所ともいえない場所を彷徨うお話が集まった短編集。いつもポケットに入れておき、繰り返し読み進めると、電車の中からでも別の世界へ誘ってくれる心地よい音楽のような作品集。



山本周五郎 「柳橋物語」「むかしも今も」     新潮文庫

わが身にとって、つらいことがあって、はじめて相手の気持ちが心底からわかった。また、つらくてもつらくても、そのなかにも幸せがあることを希望として持たせてくれる。登場人物たちはみな、懸命に生きようとしている。そんな人間賛歌がリアリティを持ってせまってきて、心が洗われる思いだ。


片岡義男 「ときには星の下で眠る」        角川文庫

オートバイをモチーフに季節毎の4部作の秋にあたる。季節の中で風とともに走り抜けていく人々とその想い。また、昔はいい単車があったんだなと想像させてくれる。このあと、夏「幸せは白いTシャツ」春「長距離ライダーの憂鬱」と続く。しかし、最後の一番読みたい冬「淋しさは河のよう」がどうしても見つからない。冬のライダーの物語を読みたいものだ。